大切にしていること
松山油脂は、1908年、雑貨商として創業し、戦後間もない1946年に石けんをつくりはじめました。当時の石けんは、「汚れが落ちればいい」「泡さえ立てばなんでもいい」というものだったようです。それから50年後の1995年、初めての自社ブランド「Mマークシリーズ」を発売しました。以来、油脂鹸化法(釜焚き製法)と脂肪酸中和法(透明石けんの製法)をコア技術としたモノづくりを続けています。泡立ちのよいボディソープ、地肌を清潔にするシャンプー、素肌を守る化粧水やクリーム。固形石けんにとどまらず、お客様の潜在的な期待に応えて、製品やブランドを拡充してきました。私たちの製品は、「肌に合うか」「刺激はないか」と、お客様が悩みながら選ぶものです。だから、洗浄料はすっきりと洗い流せて肌に残りません。スキンケアは肌に欠かせないものだけ、過不足がありません。洗うこと(WASH)と潤すこと(CARE)はいつもひとつ。私たちはそれを提供するウオッシュ&ケアカンパニーとして、お客様にとって新たなる価値を創造していきます。
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安全性と環境性、そして有用性の
バランスのとれたモノづくり。デイリープロダクト(日常品)に求められる品質とは何か。私たち松山油脂は、安全性と環境性、そして有用性のバランスを満たすことだと考えています。有用性をしっかり保ちながら、安全性が高く、自然環境にも配慮した製品。そして、毎日使うたびに楽しくなるような心地よいデザインと、安心して使える価格。これらを満たす製品を企画・開発・製造してお客様のお手元に届けることが、私たちの仕事であると考えます。同時に私たちは、「自分が使いたい」「家族に胸を張って『自分がつくった』と言える製品をつくりたい」という気持ちも大切にしています。その気持ちは、確かな品質の製品として具現化しています。
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松山油脂の誇り、釜焚き製法。
仕上がるまでに百時間。松山油脂では、ほとんどの石けんを、釜焚き製法でつくっています。昔ながらの石けんのつくり方で、釜で石けんを焚き上げることから「釜焚き製法」、または「鹸化塩析法」とも呼ばれます。「鹸化」とは、天然油脂がアルカリと反応して石けんになることです。松山油脂では、1回の鹸化で約5トンの固形石けんの素地をつくります。鹸化用の釜の直径は2メートルもあるのですが、鹸化釜としては小さな部類です。機械では計測しきれない、微妙で瞬時に変化する反応状態を目で見て確かめるためには、この大きさが最適な規模であると、松山油脂では考えています。鹸化の後は、天然塩を加えて石けんと不純物を分離させ、未鹸化物の反応を進める塩析・静置、さらに仕上げ塩析を行ない、刺激になる要素をできる限り取り除きます。原料を釜に仕込むところから、石けんとして仕上がるまでに百時間。この工程を担っている、松山油脂で最も古い作業場を、私たちは愛着を込めて「釜場」と呼んでいます。伝統の製法を守るスタッフとともに、釜場は松山油脂の誇りです。
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肌と自然にやさしい石けんは素材選びから。
「松山油脂」の石けん素地は、98.0%の純石けん分と、1.2~1.7%のグリセリン、0.3~0.7%の食塩、0.3%以下の遊離アルカリ・不鹸化物でできています。洗い上がりのつっぱり感をやわらげるのがグリセリン。原料の天然油脂に含まれていて、石けん素地に溶け込んでいます。私たちは、この石けん素地に天然精油や植物エキス、植物末、天然色素などを配合した石けんをいくつもつくっています。紫外線や温度で変化しやすい素材ではありますが、ほんのりと広がる香りや、植物を思い出させる色を生み出してくれます。毎日肌に触れるものだから、使う人の心までが自然に、おだやかになれるものを。そう考えて素材を選んでいます。
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目視できる作業を大切に、
品質に対するまなざしを深めています。松山油脂がつくるすべての製品は、幾度かの中間品検査と最終品検査、出荷直前まで続けられる検品により、品質が保証されます。釜で焚く、乾燥・熟成させて成型する。昔ながらの石けんづくりは、想像力と、一見単純な作業の丹念な繰り返しです。石けん以外の製品も標準書に従って、原料を投入し、混合する、乳化する、充填する、包装する、箱に詰める。そして記録する。どの作業でも機械は補助役にすぎません。スタッフひとりひとりが主体的にモノづくりに携わり、自分の手を動かしながら、製品が規格に合っているか、目を光らせています。キメの細かい工程管理が可能な、少量生産を続けているのは、遠回りのように感じられても、お客様にご満足いただける製品をつくるためには、それが一番の近道であると知っているから。品質は、常に私たちの最優先事項です。すべてのスタッフが、自社製品の品質に責任をもち、常にお客様と同じ視点で、製品や自分の仕事を見つめなおすことを心がけています。品質は、スタッフ全員の意識の総和であると考えます。
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距離120km、標高差1000m。
石けんの町から、富士山の麓へ。松山油脂には東京都墨田区と山梨県富士河口湖町に、ふたつの自社工場があります。天然の油脂と苛性ソーダ、苛性カリを釜でぐつぐつと焚き込み、固形や液体の石けん素地をつくっているのが墨田工場。枠練り製法やクーリングプレスといった伝統的な製法を受け継いでいるのも、古くからの石けんの町にある墨田工場です。乾燥された石けん素地は、富士山の北麓にある富士河口湖工場へと運ばれます。天然精油や植物エキス、植物末などが丹念に混合された後しっかりと練り上げられ、ひとつひとつ型打ちされて成型、包装されて最終製品となります。化粧水やクリームなどのスキンケアをつくっているのも富士河口湖工場です。ふたつの工場の距離は120km、標高差1000m。離れていても息の合った連携作業とチームワークから、今日もボディケア、ヘアケア、スキンケア、デイリーケアの各製品が生まれています。
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社会への貢献は、まず身近なところから。
松山油脂では、近隣の中学校からの職場体験を受け入れています。初めは乗り気でない生徒たちが、日を追うごとに明るく大きな声で挨拶をし、目を輝かせて体験作業に取り組むようになります。それほど人を引き付けるものが、モノづくりの現場には、ある。この実感から、松山油脂では、一般の方にも工場見学に来ていただけるようにしました。専用の見学ルートはありませんが、製品ができる過程を間近で見ることができます。私たちは、お客様に直接お会いする機会がほとんどありません。見学に来ていただくことは励みになります。いつ、誰に見られても恥ずかしくない、隠しごとのないモノづくりをしようという意欲が高まります。生業に誠実であること。基本的ですが、松山油脂が最も大切にしている社会とのつながり方です。ほかにも、墨田本社・工場では「みんなの街の清掃 in SUMIDA」を、富士河口湖工場では富士山旧登山道の清掃を定期的に実践しています。できることをひとつずつ積み重ね、地域社会から信頼される会社でありたいと考えています。